東京高等裁判所 平成5年(ラ)18号 決定 1993年2月19日
抗告人 セルバックコーポレーション
右代表者 マイケル ビー フリードマン
右代理人 廣江武典
相手方 トーマス エル メル
主文
本件抗告を棄却する。
理由
一 申請の趣旨及び理由は、原決定記載のとおりである。
二 仮登録原因の疎明の内容・程度については、当裁判所も原決定と同様の見解を採用するものである。
三 当裁判所も仮登録原因の疎明はないものと判断するが、その理由は、次に記載する外は、原決定記載のとおりである。
抗告人が本件特許権譲渡契約の譲渡書であるとして提出する疎甲第一号証は、相手方の署名がなされ公証人の証明があることから、単なる文案以上のものと解され、これに、五万米ドルの譲渡代金の支払いもなされていることを考慮すると、右譲渡契約の成立が一応認められそうである。しかし、同号証はファクシミリで送付された文書であって、その原本は抗告人に送付されていない(したがって、抗告人自身も右文書の原本には署名をしていないものと思われる。)こと、及びその後に抗告人が新たに譲渡書の原文に相手方の署名を求めたものの実行されずにいることからすると、右譲渡契約の成立(登録請求権の発生)に関する障害事実及び消滅原因事実の各不存在についての疎明がなされたということはできないものといわざるをえない。
抗告人は、疎甲第一号証の受領後も本件特許権のロイヤルティーの支払いをしたことをもって、本件契約に基づく義務を履行したものと主張しているが、元来相手方との間で締結していた実施権契約に基づく支払いの可能性もあり、本件譲渡契約の成立を推認させるものとはいえない。
四 よって、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 牧野利秋 裁判官 山下和明 木本洋子)